はじめの一歩

ようやく一歩目を踏み出すことができた。 次の一歩、どこに向かえば良いかはまだわからない。踏み出すことだけは決めた。 どこにつながるかもわからないけどどこかにはつながるだろう。次が誰なのかもいつなのかもわからない。それでも誰かが続いてくれると…

今のドアを開けると7月の埼玉とは思えないほど涼しかった。涼しいを通り越して寒い。暑がりの私が言うのだから本当に寒いのだ。 私の実家でこんな気温の日に冷房を入れることなんて今まで一度たりともなかった。 そしてまだ、この部屋に入ってから感じた違和…

色と形と

in Kyoto

隙間

拒絶は理解とは最も離れた行為で、向上を与えない。 数年前の私はただ拒絶のみをしていた。自身の感情を知ることもせず、理解してしまうと追いついてくる混沌に恐怖した。まだ近くないことはわかってはいたが、自分の在る狭い狭い世界が崩れてしまわぬように…

帰り路

最終バスの中は異国の言葉で溢れている。音楽で疲れを和らげる人、誰かと機械を通して会話をする人、目を閉じて車体の動きに身を任せる人、それぞれの方法でそれぞれの帰路を過ごしている。私はというと、通路を挟んで右隣に座っている若者の動向に気を配っ…

港町

港町が好きだ。辺りに響くエンジンの音、潮とガソリンの混じった体に染みつくような匂い、遠い水平線の近くに輝く波と船。心を穏やかにさせてくれるもので溢れている港が好きだ。 私の生まれた街には海がない。だから当然港もなかった。あそこにあるのは家ば…

海辺の町

コンテナの隙間から小さな街並みが見えた。 街は夕暮れに照らされて輝いていた。元々原色が強かったと記憶していたのだが、金色のフィルターを通したかと思うほどに、輝いていた。 見惚れてビールを飲んでいたら、周りの仲間がスマートフォンに景色を収め始…

対蹠地

飛行機の移動だけで丸3日かかった。飛んでいた時間はもっと短いけれど、乗り継ぎの時間がとても長かったためかなりの時間を要した。 今回はアムステルダムとブエノスアイレス、サンティアゴを経由した。この中で最も街並みを見てみたいアムステルダムでの乗…

東京

まだ日本を出ていないが、今回の観測が始まった。 1月4日。 準備しておいた書類を印刷。 置いておいた荷物を回収。 皆さんに挨拶。 個人の荷物は用意していたので問題なく出発できた。 1人で行くということで、すべての旅程に余裕を持たせていた。お陰でどの…

純ではない銀

3㎝ほどの棒を叩く。錆びた塊に棒を打ち付けて、アトランダムな模様を写し取る。自分ではその模様を作れないから、盗む。素材の美しい質感と引き換えにその美しい模様を手にしたというのに。対極の美をどちらも手に入れることができてしまうのはずるいように…

始まり

気が付けばもう新しい年が始まっていた。 このブログを始めることにしたのは感情や行動の記録に意味を見出したからだ。昨年11月に毎日を記録していて、その重要性に気が付いた。以前から重要なことは忘れてしまわぬように記録をしておくことはあったのだが、…

微睡み

すっかり疲れた彼女は私の腕の中で眠ってしまった。 夕暮れはとうに過ぎ、カーテンの隙間からは冷たい空気が流れてくる。名前を呼んでみる。音楽を流し、部屋の照明をつけてみたり、少し頭を撫でてみたりする。しかし寝息は止まない。無理やり体を起こしてみ…

鈍血

スッとした鉄の匂いで目が覚める。頭で考えるよりも早く体が起き上がっていた。昨日洗濯したばかりの枕カバーには500円玉くらいの跡が見える。どうやら右の鼻から盛大に出血しているようで、悠長に辺りを眺めていたらさっきまでは無事だった寝間着にも血が垂…