隙間

拒絶は理解とは最も離れた行為で、向上を与えない。

 

数年前の私はただ拒絶のみをしていた。自身の感情を知ることもせず、理解してしまうと追いついてくる混沌に恐怖した。まだ近くないことはわかってはいたが、自分の在る狭い狭い世界が崩れてしまわぬように、感情に蓋をしようとしていた。

 

ヒビだらけの狭い狭い殻が壊れないように。それだけが当時の私ができたことだった。ドロドロとした中身はとっくに零れ落ちてしまっていて、守るものはなかったはずだった。殻を守ること、それだけが残された道だと信じていた。

 

まともな思考が可能であったならば他の道を探すことができていただろう。自身よりも中身のほどんど残っていない殻を慈しんで守っていた私は、殻の外から射し込む光に目を背けていた。

 

会話をすればよかったのか、誰かに頼ればよかったのか。当てなき道をさまよい周りに尋ねることもせず地面ばかりを眺めていたからこうなったのか。

 

結局殻も守り切れなかった。殻から出る時が来て、出てしまえば私の生存に必要なものではなかったことを知った。なくてもいいものを守るために身を削り力を注いでいた。そうして守っていたからはどこかへ流れて行ってしまった。

殻を守ったのは私で、殻を壊したのも私だ。外から殻を壊そうとしていた棘は本当に殻を壊そうとしていたのかどうかはわからない。内側にあった棘すら見えていなかった。

 

無くてもいいものだった殻も大切なものに違いはなかった。ヒビを入れた何かも、守った私も、壊した私もすべて許せるはずもない。誰かが呪いと言っていた。解ける日が来るのだろうか。

 

またいつかヒビが入るのかもしれないと思うから、棘のあるものに近づきたくない。そして拒絶は続いてゆく。