海辺の町

コンテナの隙間から小さな街並みが見えた。

 

街は夕暮れに照らされて輝いていた。元々原色が強かったと記憶していたのだが、金色のフィルターを通したかと思うほどに、輝いていた。

 

見惚れてビールを飲んでいたら、周りの仲間がスマートフォンに景色を収め始めた。美しいと思ったのは私だけではなかったようだ。

 

気がつくと街の夕暮れ色は薄くなり、段々と元の姿を取り戻していた。これはこれでいい街だよなぁ、と何の意味もなく思う。

 

すると夕暮れの街の脇役だった空が輝きだした。日中から今日は珍しく雲があまりないとは思っていたけれど、晴天は夕方に最も映える。

 

街並みの奥に広がる海は暗く、水平線近くに広がる疎らな雲は薄い紅色を放っている。赤色は徐々に太陽の色を経て、上空の空色に溶けていく。色の変遷で空全体が虹となっていた。

 

空は普段から様相は変わっていないはず。だが雲の量が少ないからにしても、こんな姿は見たことがなかった。空は普段からこうなのだろう。私の住んできた場所は海がない場所だったし、周りが建物に囲まれていた。旅行で海を訪れても、こんな風に空は見上げていなかった。

 

この街も、明日離れるのか。カメラを忘れて良かった。